市区町村から「扶養重複のお尋ね」が届いたんだけど、とうしたら良いの??
「扶養重複のお尋ね」が届いた時の対処法をお伝えします。
税法上の扶養について
所得税と住民税において、16歳未満の控除対象扶養親族となる人がいる場合に、扶養主は以下の所得控除の適用を受けることができます。
区分 | 年齢等 | 所得税 | 住民税 |
配偶者控除 | 70歳未満 | 380,000円 | 330,000円 |
70歳以上 | 480,000円 | 380,000円 | |
一般の扶養親族 | 16歳〜18歳 | 380,000円 | 330,000円 |
特定扶養親族 | 18歳〜22歳 | 630,000円 | 450,000円 |
老人扶養 (70歳以上) | 同居老親以外親族 | 480,000円 | 380,000円 |
同居老親 | 580,000円 | 450,000円 |
例えば、会社員の夫(年収800万円)が専業主婦の妻(70歳未満)、大学生と高校生、中学生の子ども3人(いずれもアルバイト等の給与収入なし)を扶養している場合の控除額は以下のとおりとなります。
控除区分 | 所得税 | 住民税 | |
妻 | 配偶者控除 | 380,000円 | 330,000円 |
大学生 | 特定扶養 | 630,000円 | 450,000円 |
高校生 | 一般扶養 | 380,000円 | 330,000円 |
中学生 | 年少扶養 | 0円 | 0円 |
合計 | 1,390,000円 | 1,010,000円 |
上記の場合、扶養控除の適用により受けられる影響額は、控除額合計に税率を乗じて求めることができます。
税率 | 影響額(年間) | |
所得税 | 5%〜45%(累進課税) | 69,500円〜625,500円 |
住民税 | 10%(一律) | 101,000円 |
市区町村が扶養控除を把握する仕組み
市区町村が課税する住民税は、前年の収入に対して翌年度に課税されるいわゆる「一年遅れ」で課税される税金となり、以下の課税資料により収入や控除額を把握します。
例えば、令和5年1月から12月までの収入に基づいて、令和6年6月に住民税額が課税されます。
課税資料 | 提出期限 | 提出者 |
給与支払報告書(源泉徴収票) | 1月末日 | 給与支払者 |
公的年金等支払報告書(源泉徴収票) | 1月末日 | 年金支払者 |
確定申告書 | 3月15日 | 申告者 |
住民税申告書 | 3月15日 | 申告者 |
例えば、令和4年1月から12月まで公的年金を受給しながら会社員をしている者で、令和5年3月15日に医療費控除の確定申告した場合は、以下の3つの課税資料が市区町村に届きます。
- 令和5年1月31日までに給与支払者が提出する「給与支払報告書」
- 令和5年1月31日までに日本年金機構等の年金支払者が提出する「公的年金等支払報告書」
- 令和5年3月15日に提出した「確定申告書」
提出された「給与支払報告書」や「公的年金支払報告書」、「確定申告書」などの課税資料は、個人に名寄せされ、住民税の課税額が計算されます。
例えば、給与収入500万円、公的年金収入250万円、不動産収入300万円ある者が、確定申告で給与収入200万円、不動産収入300万円を確定申告したとしても、市区町村には給与支払者から「給与支払報告書」、年金支払者から「公的年金等支払報告書」を受領していることから、住民税の収入の算定は給与収入500万円、公的年金収入250万円、不動産収入300万円となります。(本人が確定申告した内容と異なります)
給与支払報告書 | 公的年金等支払報告書 | 確定申告書 | 住民税 | |
給与収入 | 500万円 | 200万円 | 500万円 | |
公的年金収入 | 250万円 | 250万円 | ||
不動産収入 | 300万円 | 300万円 | ||
社会保険料控除 | 20万円 | 30万円 | 30万円 | |
扶養控除 | 76万円 | 38万円 | 101万円 | 101万円 |
医療費控除 | 10万円 | 10万円 |
扶養の重複
扶養控除の適用にあたっては、被扶養者を特定した上で被扶養者の所得要件等(所得金額48万円以下か)を確認します。
例えば、夫が妻を扶養しているとして確定申告書で配偶者控除を申告している場合で、妻に給与収入金額200万円(給与所得金額68万)があることを確認すれば、夫の住民税では配偶者控除を否認したうえで課税決定します。
また、複数の者が特定の人物を扶養(扶養の重複)している場合があります。
例えば、父親(60歳)、母親(58歳)、子(30歳)の3人世帯の家庭で、父親が配偶者控除を子が母親を老人扶養として申告している場合です。
1人の被扶養者(母親)を同時に2人(父親と子)が扶養することはできませんの、被扶養者が重複した場合に市区町村から扶養主に「扶養重複のお尋ね」が届くことになります。
扶養重複のお尋ねが届いたら
市区町村から「扶養重複のお尋ね」が届いたら、扶養者同士の話し合いにより、どちらが被扶養者を扶養するのかを市区町村に回答する必要があります。
上記例で言えば、扶養者である父親と子が話し合いのもと、どちらが母親を扶養するのかを回答することになります。
「扶養重複のお尋ね」提出後の住民税は
市区町村は提出された回答に基づき、被扶養者の重複を是正します。
扶養主とならなかった者は扶養控除の適用を受けることできないため、扶養控除を除いて再計算することにより、住民税が増額更正されます。
上記例で言えば、父親と子の双方の話し合いで子が母親を扶養する回答が市区町村に提出された場合、父親の配偶者控除が否認される異なるため、住民税は年額33,000円(配偶者控除330,000円×税率10%(一律))が増額となります。
また、住民税が当初課税決定後に増額更正される場合、「重複のお尋ね」の回答時期により税増額分の払いが一括で納付する場合もあるので早めの回答をお勧めします。
まとめ
市区町村内に被扶養者がいる場合は、市区町村が被扶養者の所得金額を確認のうえ、当初の課税決定で扶養の重複を精査することができますが、被扶養者が市外在住の場合や市区町村が特定することができない場合は、一度当初の課税決定したのちに、「扶養重複のお尋ね」を送付することがあります。
住民税の扶養控除は、世帯の状況で保健料等が判定される国民健康保険に用いられることから、住民税で扶養重複による扶養否認が行われたことにより、国民健康保険料の増額更正になることもあります。
また、物価高騰対策の給付金のように国民健康保険以外でも世帯収入で算定に使われることもあるため、被扶養者の申告あたっては重複のないようにする必要があります。
コメント